taketakechopの小話の世界

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中学2年 古文「扇の的」訳 後編「矢を射た後」②

最終回=後編「矢を射た後」②では、

扇を射る余興を考えた「男」が現れ、その「男」の運命が描かれています。

1行目

あまりのおもしろさに」=与一が扇を射落としたことを、面白いと感じて、

船のうちより」の「船」=「屋形船」=「家の形をした覆いがある船」
身分の高い人は、屋形船に乗っているので、
「船のうちより」=「船の屋形の中から」

年五十ばかりなる男」=50歳ぐらいの男
2022年なら、「キムタク」「貴乃花」「マツコ・デラックス」「ドゥウェイン・ジョンソン」の年代が50歳です。
船から出てきた、この「50歳ぐらい男」が、「今回の扇の的」のお題の出題者です。
このお題は、結構な難易度で、この「50歳ぐらいの男」は落とせないと思っていたのでしょう。
しかし、落としたので、「アンビリバボー」という感じで、思わず出てきたといった感じです。

黒革をどしの鎧」の「おどし」=鎧の小さな革の板を革ひもでつづり合わせたもの。
「萌黄縅(おどし)」「萌黄におい縅」「黒糸縅」など、いろいろな種類があるそうです。

白柄の長刀」=持つとこ(柄)が「白」の長刀。

舞ひしめたり」=ここの表記は、写し本の種類で、それぞれ違うようで、どれが正しいのか、よく分からないようです。
それぞれの本で、共通しているのは、「舞った」です。
与一の弓の腕前に対して、「敵ながら、あっぱれ」の気持ちで、舞っています。

2行目

伊勢三郎義盛」=源義経重臣

御定」=「義経様からの命令」なので、「尊敬語」で、「御」がついています。

源義経」=「源義朝の9男」で、「源頼朝」とは、異母兄弟の関係です。
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源平合戦での「義経」の立ち位置は、
複数人いる中で、もっとも実力のある「現場監督」といった感じです。

ちなみに
源氏軍の「現場監督の統括者」は、義朝6男の「範頼」です。

源氏軍内は、どういった状況か?

このとき、
源氏軍の中には、

義経」が存在しており、「一枚岩の状態」ではありません。

この「壇ノ浦の戦い」の際も、
先陣争いで、「源義経」と「梶原景時」が衝突し、
家来同士が一触即発の状態でした。

梶原景時」は、「頼朝」の家来で、「義経の監視役」的な立場の人です。

「扇の的」というお題

このお題は、
難題で、「失敗して当たり前」のお題です。

滅亡寸前の平家は、「源氏に一矢報いたい」という心境から、
この「扇の的」を出題しているのでしょう。

失敗源氏だらしないアハハハ」の図式です。

そのため、
義経」にとって、
この「扇の的」は、「腸が煮えくりかえる」ようなお題です。

例えば、次の❶や❷の結果なら、
❶「扇の的」に失敗源氏の名を汚した
❷「扇の的」無視=相手に挑発されっぱなし=源氏の名を汚した

「頼朝」のもとに「梶原景時」から
義経が源氏の名を汚しました。」という報告が入っていたでしょう。

成功したにも関わらず、
「賛辞で舞っている男」を、「義経」が許せなかったのは、
それ故だったのかもしれません。


中差」=戦闘用の矢。
     「殺せ」の命令なので、「本気の矢」を取った。

ひやうふつと」=「ひょうふっと」と読みます。
         「矢が首を刺した」擬音語。


3行目

対句表現」=「平家の方には」  ⇔「源氏の方には」で対句。
       「平家」=「シーン」⇔「源氏」=「ワー」

平家の方には音もせず、」=「想定外の出来事にびっくりしている。」

しかし、
このあと、「褒めている人を殺すとは、何事ぞ。」と平家側、憤慨で。
平家軍から「血気盛んな200人余り」が源氏軍に攻め込みますが、
源氏軍80騎余りに蹴散らされてしまいます。

そして、
このあとの「弓流し」の場面に繋がります。

4行目

対句表現=「あ、射たり」⇔「情けなし」で対句。

那須与一の行為(=義経の行為)に対して

あ、射たり」=「お見事」=賛辞する人と、
情けなし」=「分別がない」=酷評する人がいます。

ここで、面白いのは、

「賛辞する人」と「酷評する人」が共に「源氏」側にいるところです。
「源氏軍で酷評している人」=「義経をよく思っていない人」です。

「酷評する人」を具体的に言えば、
先の「梶原景時」一派でしょう。

実際、このあとの物語で、
梶原景時」は、
頼朝に行った「源平合戦の結果」報告の際、
義経=最低」という「マイナス報告」をしています。


ということから考えると、
この場面で、義経が「射るな」(=「逆の命令」)を出していたとも、
結果は、同じで、

義経一派からの「分別があるなあ。器が大きいなあ」=賛辞と
義経派からの「馬鹿にされて、何もしないとは、武士として、情けない。」=酷評

の声が上がっていたのではないでしょうか。

最終回「扇の的」訳 後編「矢を射た後」②でした。

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