taketakechopの小話の世界

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中学2年 3学期学年末国語「漢詩の風景」

光村図書発行の『国語2』を対象にしています。定期テストに関係ない方は、途中すっ飛ばして頂き、もしかしたら、最後の「ここからは完全な脱線」だけは、面白いかもしれません。

 

これとは別に👇プリントタイプとプレテストを作りました。

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 「漢詩の風景」では、3つの漢詩が出てきます。「春暁」「絶句」「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」の3つです。ちなみに漢詩とは、中国で生まれた詩のことで、その形式が守られていれば、日本人が作っても、アメリカ人が作っても漢詩です。「5・7・5」のリズムが守られていれば、アメリカ人が作っても、スペイン人が作っても、俳句は俳句といった感じです。


【1】この単元で、すべきことは

①詩の形式 
押韻 
③表現技法 
④季節 
⑤情景 
⑥心情 
⑦訳 
⑧訓読文を書き下し文に直す 
の8点を押さえることです。

【2】記憶力に余裕のある人は

⑨詩人名 
⑩白文状態の漢詩全文の暗記 
⑪白文に「返り点」「送り仮名」「読み仮名」をつけて訓読文に直す。
の3点を追加して下さい。

  

 

 


①「春暁」

【白文】    【書き下し文】
春眠不覚暁   春眠暁を覚えず
処処聞啼鳥   処処啼鳥を聞く
夜来風雨声   夜来風雨の声
花落知多少   花落つること知る多少


①詩の形式
五言絶句(5字4句) 

押韻
(Gyou)・(Chou)・(Shou)
押韻は、日本語の発音で確認してもどうなのかと疑問に思う人もいるかもしれませんが、3詩とも中国語の発音で確認しても同じでした。 

③表現技法
白文部分では、特になし。
書き下し文では、転句の「声」と結句の「多少」が体言止め(!?)  
書き下し文での「表現技法」を扱うことは、まずないかなーと思うのですが、
授業担当者によっては分からないので、しっかり確認しておいた方がよいです。

④季節
 

⑤情景
心地よい朝/昨夜風雨あり

⑥心情
心地よい/悠然
④情景や⑤心情で、長々とした文を丸ごと覚えることができる人は、問題ありませんが、記憶が苦手な人はキーワード・単語で覚えると楽です。多くの問題がこのキーワード作戦で対応できます。また教科書本文に「悠然」という言葉が出てきますが、この「悠然」の意味が分かりにくいので、こういう言葉は、意味を確認しておくと良いです。
「悠然」の意味は、「物事に動ぜず、ゆったりと落ち着いているさま。」とあるので、「悠然=ゆったり」と意味を連結しておきましょう

多くの問題がこのキーワード作戦で対応できるのか、どうかの確認です。
例えば、次のような問題があったとき、

問題1 この「春暁」の詩に込められた作者の心情を次から選びなさい。
ア 平穏な毎日が続くことを祈る気持ち。
イ 旅先で故郷の春をなつかしむ気持ち。
ウ あらしのあとの荒れた庭を悲しむ気持ち。
エ のどかな春の訪れを深く味わう気持ち。

選択肢のキーワードを確認して、春暁のキーワードである「心地よい・悠然(=ゆったり)」と照らし合わせます。

ア 平穏な毎日が続くことを祈る気持ち。  =平穏・祈る 平穏…変わったこともなく、おだやかなこと。
イ 旅先で故郷の春をなつかしむ気持ち。  =なつかしむ
ウ あらしのあとの荒れた庭を悲しむ気持ち。=悲しむ
エ のどかな春の訪れを深く味わう気持ち。 =のどか・味わう のどか…穏やかで、のびのびと気持ちよく過ごせるようなさま。

ぴったりのものは、ありませんが、「ゆったり」にもっとも近いものは、「エ」だと分かります。

では、もう1問。
問題2 「春眠」から感じている作者の気持ちを、次から一つ選びなさい。
ア 悲しさ  イ 寂しさ  ウ 心地よさ  エ つまらなさ

これは、キーワードがそのまま出ちゃってますね。答は「ウ」です。

さらに、もう1問。
問題3 作者は、この詩をどんな気持ちで歌っていますか。次から一つ選びなさい。
ア 心地よい眠りを妨げる鳥に腹を立てながら歌っている。
イ 美しい花を散らす風雨に強い怒りを感じながら歌っている。
ウ 季節の移り変わりの早さに驚き、感心しながら歌っている。
エ 春になったぞという喜びを、のどかな気持ちで歌っている。

選択肢のキーワードを確認しますと、
ア 心地よい眠りを妨げる鳥に腹を立てながら歌っている。  =心地よいではなく、腹を立てる
イ 美しい花を散らす風雨に強い怒りを感じながら歌っている。=怒り
ウ 季節の移り変わりの早さに驚き、感心しながら歌っている。=感心
エ 春になったぞという喜びを、のどかな気持ちで歌っている。=のどか

キーワード「心地よい・悠然(=ゆったり)」に近いものは、「のどか」ですね。
ひとつ前の問題1と同じです。3つの問題を解いて、「のどか」が重なりました。
ということは「のどか」をキーワードに追加した方がいいかもしれませんね。
問題を重ねた場合、データを収集をしていくと、よりキーワードが強化されます。

⑦訳
起句 春眠は、暁(朝)を 覚えない。
承句 所々で、鳴く鳥を 聞く。
転句 夜、来た 風雨の音(を聞いた。)
結句 花はどれほど散ったことやら。

起承転結の構成になっているので、それぞれ1句=起句、2句=承句…となります。
なるべく白文を見て、そこから分かる訳の方が、覚える量が減るので、楽なのかなーと思います。あとは微調整を。例えば、この「春暁」では、結句の訳が難しいので、教科書の訳に沿いました。

⑧書き下し文
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少

  

 

 

②「絶句」

【白文】    【書き下し文】
江碧鳥逾白   江は碧にして鳥は逾よ白く
山青花欲然   山は青くして花は然えんと欲す
今春看又過   今春看す又過ぐ
何日是帰年   何れの日か是れ帰年ならん


①詩の形式
五言絶句(5字・4句)

押韻
(Nen)・(Nen)

③表現技法
起句と承句で対句があります。
色の確認もしておいて下さい。碧(みどり)・白・青・然(=赤)

④季節

⑤情景
異国での華やかな春

⑥心情
悲しみ・孤独

⑦訳
起句 川は碧(緑深い青)で、鳥はいよいよ白い。
承句 山は青で、花は燃えだしそうに(赤い)
転句 今春 看ているうちに また過ぎた。
結句 何れの日か これ 帰る年が来るだろうか。

⑧書き下し文
江は碧にして鳥は逾よ白く
山は青くして花は然えんと欲す
今春看す又過ぐ
何れの日か是れ帰年ならん

余談
 都の長安を離れてから5年、中国中央やや西に位置する成都で暮らしている杜甫が故郷(=長安)を忍んで詠った詩です。この詩を詠んだ前か、後ろか、分かりませんが、この年、杜甫は再び長安を目指して旅立ちます。しかし、この「絶句」を詠んだ5年後、長安に辿り着くことなく、杜甫は旅の途中で亡くなりました。

  

 

 


③「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」

【白文】      【書き下し文】
故人西辞黄鶴楼   故人西のかた黄鶴楼を辞し
煙花三月下揚州   煙花三月揚州に下る
孤帆遠影碧空尽   孤帆の遠影碧空に尽き
唯見長江天際流   唯だ見る長江の天際に流るるを


①詩の形式
七言絶句(7字・4句)

押韻
(Lou)・(Syuu)・(Ryuu)

③表現技法
白文では、特になし。
書き下し文では、結句に倒置法あり。

④季節
晩春

⑤情景
華やかな町での友との別れ

⑥心情
悲しみ・孤独

⑦訳
起句 友と 西にある黄鶴楼で 別れる。
承句 春かすみの三月 (孟浩然は)揚州に向かう。
転句 孤独な帆船の遠い影は 碧空(青い空)に 尽きる(=見えなくなる)
結句 (李白は)ただ見ている 長江の天の際に水が流れるのを。

⑧書き下し文
故人西のかた黄鶴楼を辞し
煙花三月揚州に下る
孤帆の遠影碧空に尽き
唯だ見る長江の天際に流るるを

余談
 726年のことだそうです。日本で言えば「奈良時代」です。723年「三世一身の法」と743年「墾田永年私財法」の間ですね。友となっていますが、孟浩然は李白より12歳年長で、李白が畏敬の念を抱く、先輩詩人といった感じでしょうか。ちなみにこのとき孟浩然38歳で、李白26歳だったそうです。


ここからは完全な脱線

 「孟浩然」「杜甫」「李白」に「王維」を加えた4人が盛唐時代のトップ4です。
漢詩の風景」では、この中から「孟浩然」「杜甫」「李白」が出てきます。「孟浩然は、人情派。」「杜甫は、真面目。」「李白は、自由人。」といった感じでしょうか。  

 3人とも同じ時代(「盛唐」時代)に生きており、「黄鶴楼…」の詩にもあるように孟浩然と李白は、交流があり、李白杜甫も1年ばかりだと思いますが、交流があります。孟浩然と杜甫は、交流があったかどうか、確認できませんでした。この3人が生きた時代は、日本でいうとちょうど奈良時代(710~784)にあたります。遣唐使が盛んな時代で、日本から多くの留学生が唐の都「長安」を目指しました。長安の位置を確認すると、随分内陸にあったので、思ったより長い旅なのだなーと感じました。
 それはさておき、李白は、あの「阿倍仲麻呂」とも親交があったそうです。阿倍仲麻呂といえば、唐の第9代皇帝「玄宗」に気に入られ、結局、日本に帰国できず、中国で客死(73歳)したことで有名ですが、それもそのはず、阿倍仲麻呂は、科挙に合格した唯一の日本人だそうで、19歳で留学して、わずか8年後の27歳で科挙に合格しています。科挙とは、1300年続いた中国の官僚登用試験(3年に1度行われ、30人程度が合格。)で、合格率3000倍(0.03%)の難関の中の難関です。ちなみに孟浩然も杜甫も、科挙の試験を受けていますが、共に合格していません。李白は、受験資格がなかったので、受験自体ができなかったそうです。(出が商人のため!?)阿倍仲麻呂、この時代最高の記憶力の持ち主だったのだろうなーと驚きました。「玄宗」が気に入り、手放さなかったのも、なんか納得です。

 

 

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