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映画の決まりを覚えよう「30分・60分・90分の法則」

※音楽を聴きながら、読み進めると「〇〇講座」といった雰囲気が醸し出されます。

フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299~第3楽章 ロンド:アレグロ

フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299~第3楽章 ロンド:アレグロ

  • パトリック・ガロワ(フルート)、フレデリック・カンブレラン(ハープ)、エマニュエル・クリヴィン指揮、フランス室内合奏団
  • クラシック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

おことわり

 「映画の決まりを覚えよう」と書きましたが、決して覚える必要はありませんし、こういう映画の観方は良くないと思う人もあると思います。そもそも、ここで話す「映画の決まり」は、絶対正しいことではありません。なぜなら、これは、僕が映画を観ていて、勝手に思ったことだからです。しかし、こういうことを言っている本も読んだことがあるので、完全に間違っているとは思いませんが、とりあえず興味・関心・意欲のある方で、許容のある方はお読みください。


 では、始めます。 映画には「2大法則」があります。それは、「30分・60分・90分の法則」と、「バディ(=相棒)の法則」です。今回、扱うのは「30分・60分・90分の法則」です。

 ハリウッドの大手スタジオで作られる映画の多くは、120分映画の場合、筋が「30分・60分・90分」ごとにパターン展開しています。さらに細かくいうと、15分・45分・75分・105分には、筋の骨格となる場面が挿入され、パターン展開を手助けしています。これが「30分・60分・90分の法則」です。

●30分・60分・90分の法則

始まりの30分間(0分~30分)

 主人公や登場人物の紹介や、取り巻く状況や環境などの説明に終始するのが始まりの30分間です。この30分間が上手くいかないと作品が失敗する可能性が高くなります。

30分~60分までの30分間

 30分目では、物語の大筋が提示されます。また60分以降の展開をスムーズにするための新たな問題や情報といった「新事実」が提示される30分間でもあります。この30分間に、物語に関する重要な事実をにおわせておかないと、ご都合主義な映画だなーと判断されてしまいます。

60分~90分までの30分間

 60分目で、筋の目的がはっきりして、多くの場合は、問題が大きくなります(例、個人的な問題⇒社会問題に発展)。物語は、結末に向かって進展しますが、失敗が続き、主人公が追いつめられる30分間です。

最後の30分間(90分~120分)

90分目で、主人公の「覚悟」「決断」が提示され、主人公の反撃が始まります。ここからは、問題クリア(=エンディング)に向かって、ひたすら直進する怒涛の30分間です。

  

 

 

 では、1975年、スティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』で確認してみます。

1975『ジョーズ』(124分)

ジョーズ (字幕版)

●『ジョーズ』の流れ

https://www.slashfilm.com/wp/wp-content/images/ZZ1F10B187.jpg

15分(実際の時間17分10秒)
 15分30秒、女の人の悲鳴⇒カップルのおふざけ。ひっかけておいて17分10秒、少年がサメに襲われ、第2の事件が起きる


30分 大筋の提示

 全米からサメハンターがアミティ島に集まり、「人喰いサメ退治」という大筋が提示される。30分の場面では、ブロディ署長と海洋学者のフーパーが初めて出会う場面。


45分(実際の時間44分55秒)
 捕らえたサメが本当に人を襲ったサメなのかどうか、ブロディ署長と海洋学者フーパーが確認する。結果、2人は「捕らえたサメ ≠ 人喰いサメ」だと考えるが、決定的な確証は得られず。

https://consumedbyfilm.files.wordpress.com/2015/11/jaws-cast.jpg

海開きしたい市長と反対の2人が衝突する場面


60分 筋の目的がはっきりする

 市長が押し切り海開きが再開される。59分37秒、アミティ島のビーチが観光客でごった返している中、サメのヒレが出現。ビーチは大混乱に陥るが、実は子供のいたずらだったと油断させて、61分30秒、今度は、本当に人喰いサメが現れ、大きな問題に発展


75分(実際の時間72分03秒)
 地元のサメ漁師クイントの船で「人喰いサメ退治」へと出港

 

90分 主人公の覚悟の提示
 89分あたりから、サメ漁師クイントが「サメに襲われた恐怖体験」を語り始め、それが終わった94分40秒、船がジョーズに襲われ、3人は「人喰いサメ退治」が始まったことを覚悟する。

http://www.geeklegacy.com/wp-content/uploads/2013/03/jaws-cast.jpg

左から、サメ漁師「クイント」、アミティ島署長「ブロディ」、海洋学者「フーパー」

 

105分(実際の時間104分00秒)
ジョーズの顔半分が海上に出現する。そして、クライマックへ。

http://decadesofhorror.com/wp-content/uploads/2015/06/Jaws-Orca.jpg

これは104分の場面ではないですが、一応、イメージとして。

 

 だいたいこんな感じです。赤字部分だけを読でも、なんとなく筋が掴めます。逆にこの法則に当てはめても、筋が掴めないときは、上手くいっていないときです。

  

 

 

 大手ハリウッドスタジオ制の映画は、このように作られています。この「30分・60分・90分の法則」には、絶対的に分かりやすいという効果があります。そのため、世界的に大ヒットした映画の多くは、驚くほど、この法則にピタリと当てはまっています。
逆に微妙にズレている映画は、微妙に面白くないことが多いように思います。中には全く法則にあてはあっていないのに面白いという強者もいたりするので、そういう映画を発見すると興奮します。


 また敢えて、このパターン展開をわざと避ける監督もいます。例えば、宮崎駿監督の『ハウルの動く城』や『崖の上のポニョ』は、「30分・60分・90分の法則」を避けて創られた作品だと思われます。宮崎駿監督が言うところの「僕はもう既成の起承転結のよくできたストーリーの映画なんか作りたくない」や、「ぼくはディズニーの作品がキライだ。入口と出口が同じ低さと広さで並んでいる。」といった発言、また押井守監督の『ハウルの動く城』評の「ストーリーは無茶苦茶だが表現は円熟している。」といった発言は、この辺りのことに関連しているのではないかなーと思います。

ハウルの動く城 [DVD]

 

 というわけで「映画の決まりを覚えよう『30分・60分・90分の法則』」でした。

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