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怖い言葉 「敬語、特に謙譲語」

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 学校で国語を教えていたときに、怖いなーと思うことが多々ありましたが、「敬語」がそのひとつです。

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  敬語の種類には、基本、

①尊敬語
②謙譲語
③丁寧語

の3種類がありますが、ここに「丁重語」「美化語」といったものが追加されることもあります。
※現在、教科書(光村図書発行の『国語』を対象にしています。)で「丁重語」は扱っていますが、「美化語」は扱っていません。中学3年時に敬語を習っていたときは、「美化語」は教科書に載っていましたが、「丁重語」は載っていませんでした。


「敬語」って、学校で教えていいのかなー?

 特に気になるのが「謙譲語」です。「謙譲語」の「謙」の訓読みは「へりくだる」です。「謙譲語」=「へりくだり、ゆずる言葉」です。「へりくだる」の意味は、「相手を敬って、自分を卑下する。謙遜する。」自分の中からこのような感覚が生まれたときは、問題ないと思うのですが、これを強要されるとなると、それはもう甚だしき問題です。

  

 

 

「謙譲語」はどこから生まれた言葉なのか?

 謙譲語の動詞には、2つのパターンがあります。

①量産タイプ「お(ご)~する」
 1つは、「お(ご)~する」の型にはめて作る量産タイプの言葉です。
例「 作り する」「 読み する」「 案内 する
※和語のとき、「お」をつけ、漢語のとき、「ご」をつけます。

 

②オリジナル・タイプ
 もう1つは、オリジナル・タイプの言葉です。このオリジナル・タイプにヒントが隠されているように思います。教科書に載っているオリジナル・タイプの謙譲語は、次の通りです。
例「参る」「申す」「いただく」「いたす」「うけたまわる」「存じる」などがそうです。

 これらの言葉を眺めていると、この言葉が使われていた階級が浮かんできます。ある階級というか、ある身分というか、サムライというか、忍者ハットリくんというか、恐らく、多分、きっと、これらの言葉は、武士階級から生まれた言葉だと思われます。

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 とくに身分差が明確だった武士階級が使っていた言葉なので、これらの言葉に「謙譲」という感覚が付与されたのか、これらの言葉が元々「謙譲」の意味合いを持っていたので、武士階級に使用されたのか、分かりませんが、現在「参る」「申す」「いただく」「いたす」「うけたまわる」「存じる」などの言葉は「自らをへりくだる言葉=謙譲語」だということになっています。


 誰もが自分を卑下などしたくないはずです。ましてや、今の世の中、建前は、人類、皆、平等なのですから、本来、このような言葉は消えていくのが自然の流れかなーと思うのですが、確実に残っていますし、教科書にも載っていますし、覚えさせられてもいます。

 動作・行為が向かう先の敬意を必要とする人たちが下の者たちの無意識レベルに卑下する感覚を刷り込もうとしているのかなーなどと思ったりすると、前時代的な感覚を残す敬語を教えるのって、ちょっと怖いなーと思う小話でした。