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今日の品詞❷助動詞「れる・られる」の限界


「れる・られる」は、
活用する付属語で、
助動詞と呼ばれる品詞のひとつです。

意味には、
「可能・尊敬・受け身・自発」があります。

意味を4つも持ち、
文意が伝わりにくいため、
よく入試などで出題されています。

ただ
定期テストや問題集などを見ていると、
実際には解けない問題が多々あります。

次のような問題があるとします。
解けるでしょうか。


【問題】
◎先生が食べられる。

「食べられる」の「られる」は、
「可能・尊敬・受け身・自発」の中のどの意味で使われているでしょう


【答え】
「可能・尊敬・受け身」のどれかですが、
どれかに特定することは、出来ません。

ただ
「先生」という言葉があるので、
出題者は、
「尊敬」を選ばせたいのかもしれませんが、
実際は、「自発」以外になります。


「れる・られる」の限界

「れる・られる」だけでは、
「可能・尊敬・受け身」のどれかの意味に
特定することができません。
特定するためには、
情報を足すしかありません。

◎「られる=受け身」に特定したい場合

足す情報=
動作主をつける。

・先生が 鬼に 食べられる。

「鬼に」をつけることで、
「食べる」動作をしたのは、鬼になり、
「先生」は、「鬼」の動作の受け手になるため、
られる=受け身」となります。

「受け身」は、特定できるのですが、
「可能」「尊敬」の特定は、どうでしょうか。

◎「られる=可能」に特定したい場合

まず、
助詞「が」では、難しいので、
助詞を「は」に代えます。

助詞「が」は、
「先生」と「食べる」という
2つの情報をひとつにする働きがあります。

可能感を出すためには、
「食べる」の対象物、
特に「食べるのが難しいもの」を足すと良いのですが、
」のままだと、
情報の焦点が「食べるのが難しいもの」に動きません。

・先生が 食べられる。
・先生が 硬いものを 食べられる。

語順を入れ替えると、分かりやすいです。

・硬いものを 先生が 食べられる。

上の文の焦点は、
「先生が食べられる」にあることが分かると思います。

しかし、
」に代えると、
「先生は、(どうしたのかというと)」という形になり、
情報の焦点が「先生」以降に移ります。

・先生は、 硬いものを 食べられる。
・先生は、(どうしたのかというと) 硬いものを 食べられる。

こちらも語順を変えてみます。

硬いものを 先生は、 食べられる。

上の文の情報の焦点は、
「硬いものを」「食べられる」に変わっていることが分かります。

ただ「尊敬」の可能性は、全く消えていません。
さらに助詞を追加してみます。

・先生は、 硬いものでも 食べられる。

「でも」は、逆接の仮定条件を表す「ても」が濁ったものです。

さらに、
逆接の仮定条件を、はっきりさせるため、「たとえ」を追加します。

・先生は、 たとえ硬いものでも 食べられる。

このようにしてみても、
「られる=可能」が少し優勢かぐらいで、
「られる=尊敬」の線は消えていません。

本当に消えていないか、言葉を代えて、確認してみます。

・先生は、 たとえ硬いものでも 食べることができる
・先生は、 たとえ硬いものでも 召し上がる

「食べる」をほかの表現に代えても、成立するので、
「たとえ硬いものでも」には、
意味を「可能」に限定する力がないと思います。

結局、
「れる・られる」を使って、
単文では、「尊敬」「可能」を言い分けることは、
できないと思います。
複文にしたり、文章になれば、言い分けことができると思いますが。

しかし、

①先生は、 たとえ硬いものでも 食べれる
②先生は、 食べれる
③先生が 食べれる

と「食べれる」(ら抜き言葉)にすると、
①~③のどれも「可能」の意味で伝わります。
そのため、
「ら」抜き言葉を誤用ではなく、
下一段活用の「可能動詞」ではないかという説があります。

まとめ

「れる・られる」だけでは、
「可能・尊敬・受け身」のどれかの意味に特定することができない。
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