光村図書発行の『国語3』を対象にしています。
後半です。後半は、「古今和歌集」と「新古今和歌集」の6首です。
古今和歌集(平安時代)
【見方】
歌人
読み(歴史的仮名遣い)
読み(現代仮名遣い)
和歌
訳
解説
キーワード
⑨紀貫之
ひとはいさこころもしらず/ふるさとははなぞむかしのかににほひける
ひとはいさこころもしらず/ふるさとははなぞむかしのかににおいける
人はいさ心も知らず/ふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
人の心は、さあ、どう変わってしまったのかわからない。昔なつかしい土地では、(花が昔と変わらず)香っていることだ。
「人の心」と「花の香」が対になっていて、変わらない自然に対して、人の心は変わりやすいと詠んでいます。ここでいう「花」は、「梅」のことです。あとは「ぞ」「ける」で係り結びになっていて「花」を強調しています。また紀貫之は、古今和歌集の選者のひとりです。
二句切れ/人の心⇔花の香/係り結び/紀貫之
⑩藤原敏行
あききぬとめにはさやかにみえねどもかぜのおとにぞおどろかれぬる
あききぬとめにはさやかにみえねどもかぜのおとにぞおどろかれぬる
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
秋が来たと、目には、はっきりとは見えないけれども、風の音に驚かされることである。
この歌は、立秋の日に詠まれた歌です。歌の中で「視覚」と「聴覚」が対比されていて、目に見えないけど、風の音を聞いたことによって、秋の到来を知るという繊細な感覚が歌われている。「ぞ」「ぬる」が係り結びで「風の音に」を強調。
句切れなし/立秋の日/視覚と聴覚/繊細
⑪小野小町
おもひつつぬればやひとのみえつらむ/ゆめとしりせばさめざらましを
おもいつつぬればやひとのみえつらん/ゆめとしりせばさめざらましを
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ/夢と知りせば覚めざらましを
恋しく思いながら寝たので、あなたが見えたのでしょうか。夢とわかっていたなら、覚めないでいたのに。
恋の歌です。「や」「らむ」が係り結びで、「寝れば」を強調しています。「人」とは、「恋しい人」のことです。また「覚めざらましを」には、「夢から覚めてしまって、残念だ」という思いが込められています。
三句切れ/係り結び/人/小野小町
新古今和歌集(鎌倉時代)
⑫西行法師
みちのべにしみずながるるやなぎかげ/しばしとてこそたちどまりつれ
みちのべにしみずながるるやなぎかげ/しばしとてこそたちどまりつれ
道の辺に清水流るる柳かげ/しばしとてこそ立ちどまりつれ
道のほとりに清水が流れている柳の木陰。しばらくと思って、立ち止まったのだったが…。
夏を詠んだ歌で、「清水」「柳かげ」が夏を表した言葉です。「こそ」「つれ」が係り結びで、「しばしとて」を強調しています。「立ち止まったのだが…」とありますが、結局「思わず長居してしまった」という部分が省略されています。なんともないことを歌っていますが、この*1感覚が「新古今和歌集」の特徴です。西行法師は、後世の歌人(例えば、松尾芭蕉)たちの憧れの存在で、現在でいうなら、芸能人からリスペクトされる「安室奈美恵」のような存在でしょうか?(違うか?)
三句切れ/「清水」「柳かげ」=夏/新しい趣/係り結び
⑬藤原定家
みわたせばはなももみじもなかりけり/うらのとまやのあきのゆうぐれ
みわたせばはなももみじもなかりけり /うらのとまやのあきのゆうぐれ
見わたせば花も紅葉もなかりけり/浦の苫屋の秋の夕暮
見渡すと、花も紅葉もないなー。海辺の苫屋の秋の夕暮れだなー。
この和歌も、まさにザ・新古今和歌集といった歌です。「花」「紅葉」は、華やかさの象徴です。そういった華やかさがない寂れた風景には、また違う趣があると詠んだ歌です。藤原定家は、新古今和歌集の選者のひとりです。
三句切れ/寂れた風景の趣/藤原定家
⑭式子内親王
たまのをよ/たえなばたえね/ながらへばしのぶることのよわりもぞする
たまのおよ/たえなばたえね/ながらえばしのぶることのよわりもぞする
玉の緒よ/絶えなば絶えね/ながらへば忍ぶることの弱りもぞする
私の命よ。絶えるならば絶えてしまえ。生きながらえていると忍んでいる力が弱ってしまう。
忍ぶ恋の歌です。この歌は、とても分かりやすく、王道中の王道といった和歌でしょうか。「玉の緒」とは自分の命のことです。「絶えなば絶えね」とは、「(命が)果てるなら果ててしまえ」という意味です。なぜか?というと、忍ぶ恋が隠しきれなくなるかもしれないからです。「ぞ」「する」は、係り結びで、「弱りも」を強調しています。
初句切れ・二句切れ/忍ぶ恋/係り結び
和歌を見たとき、和歌のキーワードを思い出すことが出来、そのキーワードの説明ができるようになると良いかと思います。
※「句切れ」に関しては指導書などを参考にしていますが、必ず教科担当者に確認してください。
*1:木陰の心地よさをクローズアップする=当時は新感覚