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「相撲の行儀あしく成りしは、八角より始る」江戸期の随筆『翁草』より

江戸の備忘録 (文春文庫)

 『江戸の備忘録』(文芸春秋発行/磯田道史著)を読んでいたら、面白い一文を見つけました。

「相撲の行儀あしく成りしは、八角より始る」

江戸後期の書『翁草』に書かれているそうです。『翁草』とは、神沢杜口(かんざわ とこう)という京都町奉行所の与力を務めた人物が、晩年(1770年後半)に書き留めた、200巻からなる随筆集だそうです。

そして、『江戸の備忘録』には「相撲を汚くした張本人、八角楯右衛門という力士だ」とあり、「八角は大阪は堺の力士であった。金にこだわり、給金が少ないと、ごねて相撲をとらず、土俵ではひきょうな『待った』を連発し、ひんしゅくをかっていた。だが、こういう狡猾な力士に限って相撲に負けない。ほかの力士も、勝ちたい一心で、八角のやり口をまね、汚い相撲がまんえんしてしまった。」と続きます。

 また、八角楯右衛門は、元禄時代の大関「讃岐の谷風(初代)」との一戦では、実に「47回」の待ったをし、勝利したそうです。その後、「待った」の制限回数が決められたそうです。そのためか、「コトバンク」には「享保(きょうほう)(1716-36)のころの大坂の力士。相撲の立ち合いではじめて「待った」をした人といわれる。」とありました。

 「八角楯右衛門」、よく言えば、勝利至上主義の力士の始まりでしょうか。

  

 

 

 現在の第13代日本相撲協会理事長の年寄名は「八角信芳」です。この「八角信芳」の「八角」は「相撲を汚くした張本人、八角楯右衛門という力士だ」の「八角」のことで、この「八角」の名前を引き継いでいるそうです。年寄株の数に限りがあるので、この名前しか空いていなかったのだろうけど、スゴい名前を引き継いで、理事長やっているなーと思いました。

 

「相撲の行儀あしく成りしは、八角より始る」でした。