『幸せの黄色いハンカチ』1977
山田洋次監督作品
『幸せの黄色いハンカチ』は、山田洋次監督の中期の傑作です。
ぜひ武田鉄也に注目して、観劇して頂きたいです。このとき、映画初挑戦の武田鉄也が演じる「花田鉄矢」青年は、「失恋→自暴自棄」となり、仕事を辞めて、新車を購入して、北海道にガールハントをするために旅立ちます。
とにかく、その軽薄な演技がなんとも素晴らしいのです。冒頭の8分は、武田鉄也の独壇場です。マツダファミリアを試運転する場面での、
「それと、やっぱギア固めだね」と知ったかぶる調子、
北海道に着いて、雑貨屋のおばちゃんから白の上着を勧められて、
「だけど、おばちゃん、白、百姓じゃない」と服をあて、
「もろ百姓だよーん」という返事 *1 の調子、
どのセリフも軽薄さが滲み出て、本当に素晴らしいのです。
というわけで、お薦め名言「一種の、あのー、プレーやないですかね」が出る件を再現文にしてみましたので、お時間のある人はぜひどうぞ。
(再現文)
夜
好意で宿泊させてもらった農家 *2 の一部屋、風呂上りの花田鉄也(武田鉄也)は、布団の上でくつろぐ島勇作(高倉健)から小川朱美(桃井かおり)への振舞いをに問い質される。
バドミントンのラケットを握りながら、
島 「おい、おまえ、あの娘に惚れとるんか?」
花田「ん、と申しますと?」
素っ頓狂な声がいい。
島 「本気で惚れとるだったら、
もうちょっと、ましな口説き方があるだろう」
ココから調子が上がり、花田は、短く鼻で笑って、答えます。
花田「惚れるとか、惚れんとか、
そういうパターンや、なかですよ。
なんちゅうかいいますかね。
一種の、あのー、プレーやないですかね。
一種の、こうー、プレー。
それで、向こうも割り切っとると思うがですがねー…」
化粧水をつけた手で、パチパチと顔を叩きながら、言葉を続ける花田青年は、このあと、島から説教されるという展開。
言葉で書いても、面白くないのですが、武田鉄也の声質と「一種の、あのー、プレーやないですか」という言葉の響きが見事にマッチングしています。今では、すっかりそんなイメージなくなってしまったけど、武田鉄也は、本当に軽薄な男を演じさせたら、「日本一」だなーと改めて思う今日この頃です。