僕は、ジャッキー・チェンが映画がお気に入りです。とくに80年代の作品群。ジャッキー・チェンの映画は、まず「見せ場(場面)」ありきで、「筋(内容)」は、その「見せ場」と「見せ場」を繋ぐように展開します。それ故に「内容軽視・場面重視」傾向の映画となっています。80年代は「内容軽視・場面重視」に特化した黄金期と言えます。
もうひとつの特色として、大手スーパーのような安心感がなく、個人商店のようにクセが強さがあります。いわゆるオンリー・ワンです。
例えば、
・独特な手振り、身振り。
・常軌を逸したアクション。
・意味が薄いスローモーションの多用。
・見せ場における多角度撮影による映像の繰り返し。
・主題歌も歌っちゃう。
・パッと切り上げる終幕場面。
とクセのある魅力でいっぱいです。このジャッキー商店の魅力は、とくに監督・主演・脚本のワンマン作品で堪能することができます。
主な監督作品
1979年 クレージーモンキー 笑拳
1980年 ヤングマスター
1981年 ドラゴンロード
1983年 プロジェクトA
1985年 ポリス・ストーリー/香港国際警察
1986年 サンダーアーム/龍兄虎弟 龍兄虎弟
1987年 プロジェクトA2 史上最大の標的
1988年 ポリス・ストーリー2/九龍の眼
1989年 奇蹟/ミラクル
1991年 プロジェクト・イーグル
1998年 WHO AM I?
2012年 ライジング・ドラゴン
初期の『クレージーモンキー 笑拳』『ヤングマスター』『ドラゴンロード』の3作品は、伝統カンフー劇からの脱却が模索されます。
1981年『ドラゴン・ロード』(27歳)においては「カンフーの型が一切出てこない」という伝統カンフー劇との決別ともいえるエポック作品になっています。
1983年『プロジェクトA』(29歳)から始まる一連の現代劇は、1987年『プロジェクトA2 史上最大の標的』(33歳)までが黄金期となり、健全な「内容軽視・場面重視」作品を楽しむことができますが、1988年『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』(34歳)からは「内容軽視・場面重視」のバランスが崩れ始め、ジャッキー・チェンは、禁断の「内容」を求め始めてしまいます。そのため、1989年『奇蹟/ミラクル』(35歳)は、ジャッキー・チェン監督作品の中で最も「場面重視」が弱い作品となっています。
『奇跡/ミラクル』に、一応の満足を得たジャッキー・チェンは、1991年『プロジェクト・イーグル』(37歳)で従来の「内容軽視・場面重視」傾向に戻りますが、健全な「内容軽視・場面重視」映画は、これが最後となってしまいます。
80年代は終わり、ジャッキー・チェンも大人になってしまうのでした。
お薦め作品
1981年『ドラゴン・ロード』(日本公開版)